1NOTE:
2This is a version of Documentation/HOWTO translated into Japanese.
3This document is maintained by Tsugikazu Shibata <tshibata@ab.jp.nec.com>
4and the JF Project team <www.linux.or.jp/JF>.
5If you find any difference between this document and the original file
6or a problem with the translation,
7please contact the maintainer of this file or JF project.
8
9Please also note that the purpose of this file is to be easier to read
10for non English (read: Japanese) speakers and is not intended as a
11fork. So if you have any comments or updates for this file, please try
12to update the original English file first.
13
14Last Updated: 2008/10/24
15==================================
16これは、
17linux-2.6.28/Documentation/HOWTO
18の和訳です。
19
20翻訳団体: JF プロジェクト < http://www.linux.or.jp/JF/ >
21翻訳日: 2008/10/24
22翻訳者: Tsugikazu Shibata <tshibata at ab dot jp dot nec dot com>
23校正者: 松倉さん <nbh--mats at nifty dot com>
24         小林 雅典さん (Masanori Kobayasi) <zap03216 at nifty dot ne dot jp>
25         武井伸光さん、<takei at webmasters dot gr dot jp>
26         かねこさん (Seiji Kaneko) <skaneko at a2 dot mbn dot or dot jp>
27         野口さん (Kenji Noguchi) <tokyo246 at gmail dot com>
28         河内さん (Takayoshi Kochi) <t-kochi at bq dot jp dot nec dot com>
29         岩本さん (iwamoto) <iwamoto.kn at ncos dot nec dot co dot jp>
30         内田さん (Satoshi Uchida) <s-uchida at ap dot jp dot nec dot com>
31==================================
32
33Linux カーネル開発のやり方
34-------------------------------
35
36これは上のトピック( Linux カーネル開発のやり方)の重要な事柄を網羅した
37ドキュメントです。ここには Linux カーネル開発者になるための方法と
38Linux カーネル開発コミュニティと共に活動するやり方を学ぶ方法が含まれて
39います。カーネルプログラミングに関する技術的な項目に関することは何も含
40めないようにしていますが、カーネル開発者となるための正しい方向に向かう
41手助けになります。
42
43もし、このドキュメントのどこかが古くなっていた場合には、このドキュメン
44トの最後にリストしたメンテナにパッチを送ってください。
45
46はじめに
47---------
48
49あなたは Linux カーネルの開発者になる方法を学びたいのでしょうか? そ
50れともあなたは上司から「このデバイスの Linux ドライバを書くように」と
51言われているのでしょうか? 
52この文書の目的は、あなたが踏むべき手順と、コミュニティと一緒にうまく働
53くヒントを書き下すことで、あなたが知るべき全てのことを教えることです。
54また、このコミュニティがなぜ今うまくまわっているのかという理由の一部も
55説明しようと試みています。
56
57
58カーネルは 少量のアーキテクチャ依存部分がアセンブリ言語で書かれている
59以外は大部分は C 言語で書かれています。C言語をよく理解していることはカー
60ネル開発者には必要です。アーキテクチャ向けの低レベル部分の開発をするの
61でなければ、(どんなアーキテクチャでも)アセンブリ(訳注: 言語)は必要あり
62ません。以下の本は、C 言語の十分な知識や何年もの経験に取って代わるもの
63ではありませんが、少なくともリファレンスとしては良い本です。
64 - "The C Programming Language" by Kernighan and Ritchie [Prentice Hall]
65 -『プログラミング言語C第2版』(B.W. カーニハン/D.M. リッチー著 石田晴久訳) [共立出版]
66 - "Practical C Programming" by Steve Oualline [O'Reilly]
67 - 『C実践プログラミング第3版』(Steve Oualline著 望月康司監訳 谷口功訳) [オライリージャパン]
68 - "C:  A Reference Manual" by Harbison and Steele [Prentice Hall]
69 - 『新・詳説 C 言語 H&S リファレンス』
70       (サミュエル P ハービソン/ガイ L スティール共著 斉藤 信男監訳)[ソフトバンク]
71
72カーネルは GNU C と GNU ツールチェインを使って書かれています。カーネル
73は ISO C89 仕様に準拠して書く一方で、標準には無い言語拡張を多く使って
74います。カーネルは標準 C ライブラリとは関係がないといった、C 言語フリー
75スタンディング環境です。そのため、C の標準で使えないものもあります。任
76意の long long の除算や浮動小数点は使えません。
77ときどき、カーネルがツールチェインや C 言語拡張に置いている前提がどう
78なっているのかわかりにくいことがあり、また、残念なことに決定的なリファ
79レンスは存在しません。情報を得るには、gcc の info ページ( info gcc )を
80見てください。
81
82あなたは既存の開発コミュニティと一緒に作業する方法を学ぼうとしているこ
83とに留意してください。そのコミュニティは、コーディング、スタイル、
84開発手順について高度な標準を持つ、多様な人の集まりです。
85地理的に分散した大規模なチームに対してもっともうまくいくとわかったこと
86をベースにしながら、これらの標準は長い時間をかけて築かれてきました。
87これらはきちんと文書化されていますから、事前にこれらの標準についてでき
88るだけたくさん学んでください。また皆があなたやあなたの会社のやり方に合わ
89せてくれると思わないでください。
90
91法的問題
92------------
93
94Linux カーネルのソースコードは GPL ライセンスの下でリリースされていま
95す。ライセンスの詳細については、ソースツリーのメインディレクトリに存在
96する、COPYING のファイルを見てください。もしライセンスについてさらに質
97問があれば、Linux Kernel メーリングリストに質問するのではなく、どうぞ
98法律家に相談してください。メーリングリストの人達は法律家ではなく、法的
99問題については彼らの声明はあてにするべきではありません。
100
101GPL に関する共通の質問や回答については、以下を参照してください。
102	http://www.gnu.org/licenses/gpl-faq.html
103
104ドキュメント
105------------
106
107Linux カーネルソースツリーは幅広い範囲のドキュメントを含んでおり、それ
108らはカーネルコミュニティと会話する方法を学ぶのに非常に貴重なものです。
109新しい機能がカーネルに追加される場合、その機能の使い方について説明した
110新しいドキュメントファイルも追加することを勧めます。
111カーネルの変更が、カーネルがユーザ空間に公開しているインターフェイスの
112変更を引き起こす場合、その変更を説明するマニュアルページのパッチや情報
113をマニュアルページのメンテナ mtk.manpages@gmail.com に送り、CC を
114linux-api@ver.kernel.org に送ることを勧めます。
115
116以下はカーネルソースツリーに含まれている読んでおくべきファイルの一覧で
117す-
118
119  README
120    このファイルは Linuxカーネルの簡単な背景とカーネルを設定(訳注
121    configure )し、生成(訳注 build )するために必要なことは何かが書かれ
122    ています。カーネルに関して初めての人はここからスタートすると良いで
123    しょう。
124
125  Documentation/Changes
126     このファイルはカーネルをうまく生成(訳注 build )し、走らせるのに最
127     小限のレベルで必要な数々のソフトウェアパッケージの一覧を示してい
128     ます。
129
130  Documentation/CodingStyle
131    これは Linux カーネルのコーディングスタイルと背景にある理由を記述
132    しています。全ての新しいコードはこのドキュメントにあるガイドライン
133    に従っていることを期待されています。大部分のメンテナはこれらのルー
134    ルに従っているものだけを受け付け、多くの人は正しいスタイルのコード
135    だけをレビューします。
136
137  Documentation/SubmittingPatches
138  Documentation/SubmittingDrivers
139     これらのファイルには、どうやってうまくパッチを作って投稿するかに
140     ついて非常に詳しく書かれており、以下を含みます(これだけに限らない
141     けれども)
142        - Email に含むこと
143        - Email の形式
144        - だれに送るか
145     これらのルールに従えばうまくいくことを保証することではありません
146     が (すべてのパッチは内容とスタイルについて精査を受けるので)、
147     ルールに従わなければ間違いなくうまくいかないでしょう。
148
149     この他にパッチを作る方法についてのよくできた記述は-
150
151	"The Perfect Patch"
152		http://userweb.kernel.org/~akpm/stuff/tpp.txt
153	"Linux kernel patch submission format"
154		http://linux.yyz.us/patch-format.html
155
156  Documentation/stable_api_nonsense.txt
157     このファイルはカーネルの中に不変のAPIを持たないことにした意識的な
158     決断の背景にある理由について書かれています。以下のようなことを含
159     んでいます-
160       - サブシステムとの間に層を作ること(コンパチビリティのため?)
161       - オペレーティングシステム間のドライバの移植性
162       - カーネルソースツリーの素早い変更を遅らせる(もしくは素早い変更
163         を妨げる)
164     このドキュメントは Linux 開発の思想を理解するのに非常に重要です。
165     そして、他のOSでの開発者が Linux に移る時にとても重要です。
166
167  Documentation/SecurityBugs
168    もし Linux カーネルでセキュリティ問題を発見したように思ったら、こ
169    のドキュメントのステップに従ってカーネル開発者に連絡し、問題解決を
170    支援してください。
171
172  Documentation/ManagementStyle
173    このドキュメントは Linux カーネルのメンテナ達がどう行動するか、
174    彼らの手法の背景にある共有されている精神について記述しています。こ
175    れはカーネル開発の初心者なら(もしくは、単に興味があるだけの人でも)
176    重要です。なぜならこのドキュメントは、カーネルメンテナ達の独特な
177    行動についての多くの誤解や混乱を解消するからです。
178
179  Documentation/stable_kernel_rules.txt
180    このファイルはどのように stable カーネルのリリースが行われるかのルー
181    ルが記述されています。そしてこれらのリリースの中のどこかで変更を取
182    り入れてもらいたい場合に何をすれば良いかが示されています。
183
184  Documentation/kernel-docs.txt
185  カーネル開発に付随する外部ドキュメントのリストです。もしあなたが
186    探しているものがカーネル内のドキュメントでみつからなかった場合、
187    このリストをあたってみてください。
188
189  Documentation/applying-patches.txt
190    パッチとはなにか、パッチをどうやって様々なカーネルの開発ブランチに
191    適用するのかについて正確に記述した良い入門書です。
192
193カーネルはソースコードから自動的に生成可能な多数のドキュメントを自分自
194身でもっています。これにはカーネル内 API のすべての記述や、どう正しく
195ロックをかけるかの規則が含まれます。このドキュメントは
196Documentation/DocBook/ ディレクトリに作られ、以下のように
197	make pdfdocs
198	make psdocs
199	make htmldocs
200	make mandocs
201コマンドを実行するとメインカーネルのソースディレクトリから
202それぞれ、PDF, Postscript, HTML, man page の形式で生成されます。
203
204カーネル開発者になるには
205---------------------------
206
207もしあなたが、Linux カーネル開発について何も知らないならば、
208KernelNewbies プロジェクトを見るべきです
209	http://kernelnewbies.org
210
211このサイトには役に立つメーリングリストがあり、基本的なカーネル開発に関
212するほとんどどんな種類の質問もできます (既に回答されているようなことを
213聞く前にまずはアーカイブを調べてください)。
214またここには、リアルタイムで質問を聞くことができる IRC チャネルや、Linux
215カーネルの開発に関して学ぶのに便利なたくさんの役に立つドキュメントがあ
216ります。
217
218web サイトには、コードの構成、サブシステム、現在存在するプロジェクト(ツ
219リーにあるもの無いものの両方)の基本的な管理情報があります。
220ここには、また、カーネルのコンパイルのやり方やパッチの当て方などの間接
221的な基本情報も記述されています。
222
223あなたがどこからスタートして良いかわからないが、Linux カーネル開発コミュ
224ニティに参加して何かすることをさがしている場合には、Linux kernel
225Janitor's プロジェクトにいけば良いでしょう -
226	http://kernelnewbies.org/KernelJanitors
227ここはそのようなスタートをするのにうってつけの場所です。ここには、
228Linux カーネルソースツリーの中に含まれる、きれいにし、修正しなければな
229らない、単純な問題のリストが記述されています。このプロジェクトに関わる
230開発者と一緒に作業することで、あなたのパッチを Linuxカーネルツリーに入
231れるための基礎を学ぶことができ、そしてもしあなたがまだアイディアを持っ
232ていない場合には、次にやる仕事の方向性が見えてくるかもしれません。
233
234もしあなたが、すでにひとまとまりコードを書いていて、カーネルツリーに入
235れたいと思っていたり、それに関する適切な支援を求めたい場合、カーネル
236メンターズプロジェクトはそのような皆さんを助けるためにできました。
237ここにはメーリングリストがあり、以下から参照できます
238	http://selenic.com/mailman/listinfo/kernel-mentors
239
240実際に Linux カーネルのコードについて修正を加える前に、どうやってその
241コードが動作するのかを理解することが必要です。そのためには、特別なツー
242ルの助けを借りてでも、それを直接よく読むことが最良の方法です(ほとんど
243のトリッキーな部分は十分にコメントしてありますから)。そういうツールで
244特におすすめなのは、Linux クロスリファレンスプロジェクトです。これは、
245自己参照方式で、索引がついた web 形式で、ソースコードを参照することが
246できます。この最新の素晴しいカーネルコードのリポジトリは以下で見つかり
247ます-
248	http://sosdg.org/~qiyong/lxr/
249
250開発プロセス
251-----------------------
252
253Linux カーネルの開発プロセスは現在幾つかの異なるメインカーネル「ブラン
254チ」と多数のサブシステム毎のカーネルブランチから構成されます。
255これらのブランチとは-
256  - メインの 2.6.x カーネルツリー
257  - 2.6.x.y -stable カーネルツリー
258  - 2.6.x -git カーネルパッチ
259  - 2.6.x -mm カーネルパッチ
260  - サブシステム毎のカーネルツリーとパッチ
261
2622.6.x カーネルツリー
263-----------------
264
2652.6.x カーネルは Linus Torvalds によってメンテナンスされ、kernel.org
266pub/linux/kernel/v2.6/ ディレクトリに存在します。この開発プロセスは
267以下のとおり-
268
269  - 新しいカーネルがリリースされた直後に、2週間の特別期間が設けられ、
270    この期間中に、メンテナ達は Linus に大きな差分を送ることができます。
271    このような差分は通常 -mm カーネルに数週間含まれてきたパッチです。
272    大きな変更は git(カーネルのソース管理ツール、詳細は
273    http://git.or.cz/  参照) を使って送るのが好ましいやり方ですが、パッ
274    チファイルの形式のまま送るのでも十分です。
275
276  - 2週間後、-rc1 カーネルがリリースされ、この後にはカーネル全体の安定
277    性に影響をあたえるような新機能は含まない類のパッチしか取り込むこと
278    はできません。新しいドライバ(もしくはファイルシステム)のパッチは
279    -rc1 の後で受け付けられることもあることを覚えておいてください。な
280    ぜなら、変更が独立していて、追加されたコードの外の領域に影響を与え
281    ない限り、退行のリスクは無いからです。-rc1 がリリースされた後、
282    Linus へパッチを送付するのに git を使うこともできますが、パッチは
283    レビューのために、パブリックなメーリングリストへも同時に送る必要が
284    あります。
285
286  - 新しい -rc は Linus が、最新の git ツリーがテスト目的であれば十分
287    に安定した状態にあると判断したときにリリースされます。目標は毎週新
288    しい -rc カーネルをリリースすることです。
289
290  - このプロセスはカーネルが 「準備ができた」と考えられるまで継続しま
291    す。このプロセスはだいたい 6週間継続します。
292
293  - 各リリースでの既知の後戻り問題(regression: このリリースの中で新規
294    に作り込まれた問題を指す) はその都度 Linux-kernel メーリングリスト
295    に投稿されます。ゴールとしては、カーネルが 「準備ができた」と宣言
296    する前にこのリストの長さをゼロに減らすことですが、現実には、数個の
297    後戻り問題がリリース時にたびたび残ってしまいます。
298
299Andrew Morton が Linux-kernel メーリングリストにカーネルリリースについ
300て書いたことをここで言っておくことは価値があります-
301  「カーネルがいつリリースされるかは誰も知りません。なぜなら、これは現
302  実に認識されたバグの状況によりリリースされるのであり、前もって決めら
303  れた計画によってリリースされるものではないからです。」
304
3052.6.x.y -stable カーネルツリー
306---------------------------
307
308バージョン番号が4つの数字に分かれているカーネルは -stable カーネルです。
309これには、2.6.x カーネルで見つかったセキュリティ問題や重大な後戻りに対
310する比較的小さい重要な修正が含まれます。
311
312これは、開発/実験的バージョンのテストに協力することに興味が無く、
313最新の安定したカーネルを使いたいユーザに推奨するブランチです。
314
315もし、2.6.x.y カーネルが存在しない場合には、番号が一番大きい 2.6.x316最新の安定版カーネルです。
317
3182.6.x.y は "stable" チーム <stable@kernel.org> でメンテされており、必
319要に応じてリリースされます。通常のリリース期間は 2週間毎ですが、差し迫っ
320た問題がなければもう少し長くなることもあります。セキュリティ関連の問題
321の場合はこれに対してだいたいの場合、すぐにリリースがされます。
322
323カーネルツリーに入っている、Documentation/stable_kernel_rules.txt ファ
324イルにはどのような種類の変更が -stable ツリーに受け入れ可能か、またリ
325リースプロセスがどう動くかが記述されています。
326
3272.6.x -git パッチ
328------------------
329
330git リポジトリで管理されているLinus のカーネルツリーの毎日のスナップ
331ショットがあります。(だから -git という名前がついています)。これらのパッ
332チはおおむね毎日リリースされており、Linus のツリーの現状を表します。こ
333れは -rc カーネルと比べて、パッチが大丈夫かどうかも確認しないで自動的
334に生成されるので、より実験的です。
335
3362.6.x -mm カーネルパッチ
337------------------------
338
339Andrew Morton によってリリースされる実験的なカーネルパッチ群です。
340Andrew は個別のサブシステムカーネルツリーとパッチを全て集めてきて
341linux-kernel メーリングリストで収集された多数のパッチと同時に一つにま
342とめます。
343このツリーは新機能とパッチが検証される場となります。ある期間の間パッチ
344が -mm に入って価値を証明されたら、Andrew やサブシステムメンテナが、
345メインラインへ入れるように Linus にプッシュします。
346
347メインカーネルツリーに含めるために Linus に送る前に、すべての新しいパッ
348チが -mm ツリーでテストされることが強く推奨されています。マージウィン
349ドウが開く前に -mm ツリーに現れなかったパッチはメインラインにマージさ
350れることは困難になります。
351
352これらのカーネルは安定して動作すべきシステムとして使うのには適切ではあ
353りませんし、カーネルブランチの中でももっとも動作にリスクが高いものです。
354
355もしあなたが、カーネル開発プロセスの支援をしたいと思っているのであれば、
356どうぞこれらのカーネルリリースをテストに使ってみて、そしてもし問題があ
357れば、またもし全てが正しく動作したとしても、linux-kernel メーリングリ
358ストにフィードバックを提供してください。
359
360すべての他の実験的パッチに加えて、これらのカーネルは通常リリース時点で
361メインラインの -git カーネルに含まれる全ての変更も含んでいます。
362
363-mm カーネルは決まったスケジュールではリリースされません、しかし通常幾
364つかの -mm カーネル (1 から 3 が普通)が各-rc カーネルの間にリリースさ
365れます。
366
367サブシステム毎のカーネルツリーとパッチ
368-------------------------------------------
369
370カーネルの様々な領域で何が起きているかを見られるようにするため、多くの
371カーネルサブシステム開発者は彼らの開発ツリーを公開しています。これらの
372ツリーは説明したように -mm カーネルリリースに入れ込まれます。
373
374以下はさまざまなカーネルツリーの中のいくつかのリスト-
375
376  git ツリー-
377    - Kbuild の開発ツリー、Sam Ravnborg <sam@ravnborg.org>
378	git.kernel.org:/pub/scm/linux/kernel/git/sam/kbuild.git
379
380    - ACPI の開発ツリー、 Len Brown <len.brown@intel.com>
381	git.kernel.org:/pub/scm/linux/kernel/git/lenb/linux-acpi-2.6.git
382
383    - Block の開発ツリー、Jens Axboe <axboe@suse.de>
384	git.kernel.org:/pub/scm/linux/kernel/git/axboe/linux-2.6-block.git
385
386    - DRM の開発ツリー、Dave Airlie <airlied@linux.ie>
387	git.kernel.org:/pub/scm/linux/kernel/git/airlied/drm-2.6.git
388
389    - ia64 の開発ツリー、Tony Luck <tony.luck@intel.com>
390	git.kernel.org:/pub/scm/linux/kernel/git/aegl/linux-2.6.git
391
392    - infiniband, Roland Dreier <rolandd@cisco.com>
393	git.kernel.org:/pub/scm/linux/kernel/git/roland/infiniband.git
394
395    - libata, Jeff Garzik <jgarzik@pobox.com>
396	git.kernel.org:/pub/scm/linux/kernel/git/jgarzik/libata-dev.git
397
398    - ネットワークドライバ, Jeff Garzik <jgarzik@pobox.com>
399	git.kernel.org:/pub/scm/linux/kernel/git/jgarzik/netdev-2.6.git
400
401    - pcmcia, Dominik Brodowski <linux@dominikbrodowski.net>
402	git.kernel.org:/pub/scm/linux/kernel/git/brodo/pcmcia-2.6.git
403
404    - SCSI, James Bottomley <James.Bottomley@hansenpartnership.com>
405	git.kernel.org:/pub/scm/linux/kernel/git/jejb/scsi-misc-2.6.git
406
407    - x86, Ingo Molnar <mingo@elte.hu>
408	git://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/x86/linux-2.6-x86.git
409
410  quilt ツリー-
411    - USB, ドライバコアと I2C, Greg Kroah-Hartman <gregkh@suse.de>
412	kernel.org/pub/linux/kernel/people/gregkh/gregkh-2.6/
413
414  その他のカーネルツリーは http://git.kernel.org/ と MAINTAINERS ファ
415  イルに一覧表があります。
416
417バグレポート
418-------------
419
420bugzilla.kernel.org は Linux カーネル開発者がカーネルのバグを追跡する
421場所です。ユーザは見つけたバグの全てをこのツールで報告すべきです。
422どう kernel bugzilla を使うかの詳細は、以下を参照してください-
423	http://bugzilla.kernel.org/page.cgi?id=faq.html
424メインカーネルソースディレクトリにあるファイル REPORTING-BUGS はカーネ
425ルバグらしいものについてどうレポートするかの良いテンプレートであり、問
426題の追跡を助けるためにカーネル開発者にとってどんな情報が必要なのかの詳
427細が書かれています。
428
429バグレポートの管理
430-------------------
431
432あなたのハッキングのスキルを訓練する最高の方法のひとつに、他人がレポー
433トしたバグを修正することがあります。あなたがカーネルをより安定化させる
434こに寄与するということだけでなく、あなたは 現実の問題を修正することを
435学び、自分のスキルも強化でき、また他の開発者があなたの存在に気がつき
436ます。バグを修正することは、多くの開発者の中から自分が功績をあげる最善
437の道です、なぜなら多くの人は他人のバグの修正に時間を浪費することを好ま
438ないからです。
439
440すでにレポートされたバグのために仕事をするためには、
441http://bugzilla.kernel.org に行ってください。もし今後のバグレポートに
442ついてアドバイスを受けたいのであれば、bugme-new メーリングリスト(新し
443いバグレポートだけがここにメールされる) または bugme-janitor メーリン
444グリスト(bugzilla の変更毎にここにメールされる)を購読できます。
445
446	http://lists.linux-foundation.org/mailman/listinfo/bugme-new
447	http://lists.linux-foundation.org/mailman/listinfo/bugme-janitors
448
449メーリングリスト
450-------------
451
452上のいくつかのドキュメントで述べていますが、コアカーネル開発者の大部分
453は Linux kernel メーリングリストに参加しています。このリストの登録/脱
454退の方法については以下を参照してください-
455	http://vger.kernel.org/vger-lists.html#linux-kernel
456
457このメーリングリストのアーカイブは web 上の多数の場所に存在します。こ
458れらのアーカイブを探すにはサーチエンジンを使いましょう。例えば-
459	http://dir.gmane.org/gmane.linux.kernel
460
461リストに投稿する前にすでにその話題がアーカイブに存在するかどうかを検索
462することを是非やってください。多数の事がすでに詳細に渡って議論されて
463おり、アーカイブにのみ記録されています。
464
465大部分のカーネルサブシステムも自分の個別の開発を実施するメーリングリス
466トを持っています。個々のグループがどんなリストを持っているかは、
467MAINTAINERS ファイルにリストがありますので参照してください。
468
469多くのリストは kernel.org でホストされています。これらの情報は以下にあ
470ります-
471	http://vger.kernel.org/vger-lists.html
472
473メーリングリストを使う場合、良い行動習慣に従うようにしましょう。
474少し安っぽいが、以下の URL は上のリスト(や他のリスト)で会話する場合の
475シンプルなガイドラインを示しています-
476	http://www.albion.com/netiquette/
477
478もし複数の人があなたのメールに返事をした場合、CC: で受ける人のリストは
479だいぶ多くなるでしょう。良い理由がない場合、CC: リストから誰かを削除を
480しないように、また、メーリングリストのアドレスだけにリプライすることの
481ないようにしましょう。1つは送信者から、もう1つはリストからのように、メー
482ルを2回受けることになってもそれに慣れ、しゃれたメールヘッダーを追加し
483てこの状態を変えようとしないように。人々はそのようなことは好みません。
484
485今までのメールでのやりとりとその間のあなたの発言はそのまま残し、
486"John Kernlehacker wrote ...:" の行をあなたのリプライの先頭行にして、
487メールの先頭でなく、各引用行の間にあなたの言いたいことを追加するべきで
488す。
489
490もしパッチをメールに付ける場合は、Documentaion/SubmittingPatches に提
491示されているように、それは プレーンな可読テキストにすることを忘れない
492ようにしましょう。カーネル開発者は 添付や圧縮したパッチを扱いたがりま
493せん-
494彼らはあなたのパッチの行毎にコメントを入れたいので、そのためにはそうす
495るしかありません。あなたのメールプログラムが空白やタブを圧縮しないよう
496に確認した方が良いです。最初の良いテストとしては、自分にメールを送って
497みて、そのパッチを自分で当ててみることです。もしそれがうまく行かないな
498ら、あなたのメールプログラムを直してもらうか、正しく動くように変えるべ
499きです。
500
501とりわけ、他の登録者に対する尊敬を表すようにすることを覚えておいてくだ
502さい。
503
504コミュニティと共に働くこと
505--------------------------
506
507カーネルコミュニティのゴールは可能なかぎり最高のカーネルを提供すること
508です。あなたがパッチを受け入れてもらうために投稿した場合、それは、技術
509的メリットだけがレビューされます。その際、あなたは何を予想すべきでしょ
510うか?
511  - 批判
512  - コメント
513  - 変更の要求
514  - パッチの正当性の証明要求
515  - 沈黙
516
517思い出してください、ここはあなたのパッチをカーネルに入れる話です。あ
518なたは、あなたのパッチに対する批判とコメントを受け入れるべきで、それら
519を技術的レベルで評価して、パッチを再作成するか、なぜそれらの変更をすべ
520きでないかを明確で簡潔な理由の説明を提供してください。
521もし、あなたのパッチに何も反応がない場合、たまにはメールの山に埋もれて
522見逃され、あなたの投稿が忘れられてしまうこともあるので、数日待って再度
523投稿してください。
524
525あなたがやるべきでないものは?
526  - 質問なしにあなたのパッチが受け入れられると想像すること
527  - 守りに入ること
528  - コメントを無視すること
529  - 要求された変更を何もしないでパッチを出し直すこと
530
531可能な限り最高の技術的解決を求めているコミュニティでは、パッチがどのく
532らい有益なのかについては常に異なる意見があります。あなたは協調的である
533べきですし、また、あなたのアイディアをカーネルに対してうまく合わせるよ
534うにすることが望まれています。もしくは、最低限あなたのアイディアがそれ
535だけの価値があるとすすんで証明するようにしなければなりません。
536正しい解決に向かって進もうという意志がある限り、間違うことがあっても許
537容されることを忘れないでください。
538
539あなたの最初のパッチに単に 1ダースもの修正を求めるリストの返答になるこ
540とも普通のことです。これはあなたのパッチが受け入れられないということで
541は *ありません*、そしてあなた自身に反対することを意味するのでも *ありま
542せん*。単に自分のパッチに対して指摘された問題を全て修正して再送すれば
543良いのです。
544
545
546カーネルコミュニティと企業組織のちがい
547-----------------------------------------------------------------
548
549カーネルコミュニティは大部分の伝統的な会社の開発環境とは異ったやり方で
550動いています。以下は問題を避けるためにできると良いことのリストです-
551
552  あなたの提案する変更について言うときのうまい言い方:
553
554    - "これは複数の問題を解決します"
555    - "これは2000行のコードを削除します"
556    - "以下のパッチは、私が言おうとしていることを説明するものです"
557    - "私はこれを5つの異なるアーキテクチャでテストしたのですが..."
558    - "以下は一連の小さなパッチ群ですが..."
559    - "これは典型的なマシンでの性能を向上させます.."
560
561  やめた方が良い悪い言い方:
562
563    - このやり方で AIX/ptx/Solaris ではできたので、できるはずだ
564    - 私はこれを20年もの間やってきた、だから
565    - これは、私の会社が金儲けをするために必要だ
566    - これは我々のエンタープライズ向け商品ラインのためである
567    - これは 私が自分のアイディアを記述した、1000ページの設計資料である
568    - 私はこれについて、6ケ月作業している。
569    - 以下は ... に関する5000行のパッチです
570    - 私は現在のぐちゃぐちゃを全部書き直した、それが以下です...
571    - 私は〆切がある、そのためこのパッチは今すぐ適用される必要がある
572
573カーネルコミュニティが大部分の伝統的なソフトウェアエンジニアリングの労
574働環境と異なるもう一つの点は、やりとりに顔を合わせないということです。
575email と irc を第一のコミュニケーションの形とする一つの利点は、性別や
576民族の差別がないことです。Linux カーネルの職場環境は女性や少数民族を受
577容します。なぜなら、email アドレスによってのみあなたが認識されるからで
578す。
579国際的な側面からも活動領域を均等にするようにします。なぜならば、あなた
580は人の名前で性別を想像できないからです。ある男性が アンドレアという名
581前で、女性の名前は パット かもしれません (訳注 Andrea は米国では女性、
582それ以外(欧州など)では男性名として使われることが多い。同様に、Pat は
583Patricia (主に女性名)や Patrick (主に男性名)の略称)。
584Linux カーネルの活動をして、意見を表明したことがある大部分の女性は、前
585向きな経験をもっています。
586
587言葉の壁は英語が得意でない一部の人には問題になります。
588メーリングリストの中できちんとアイディアを交換するには、相当うまく英語
589を操れる必要があることもあります。そのため、あなたは自分のメール
590を送る前に英語で意味が通じているかをチェックすることをお薦めします。
591
592変更を分割する
593---------------------
594
595Linux カーネルコミュニティは、一度に大量のコードの塊を喜んで受容するこ
596とはありません。変更は正確に説明される必要があり、議論され、小さい、個
597別の部分に分割する必要があります。これはこれまで多くの会社がやり慣れて
598きたことと全く正反対のことです。あなたのプロポーザルは、開発プロセスのと
599ても早い段階から紹介されるべきです。そうすれば あなたは自分のやってい
600ることにフィードバックを得られます。これは、コミュニティからみれば、あ
601なたが彼らと一緒にやっているように感じられ、単にあなたの提案する機能の
602ゴミ捨て場として使っているのではない、と感じられるでしょう。
603しかし、一度に 50 もの email をメーリングリストに送りつけるようなことは
604やってはいけません、あなたのパッチ群はいつもどんな時でもそれよりは小さ
605くなければなりません。
606
607パッチを分割する理由は以下です-
608
6091) 小さいパッチはあなたのパッチが適用される見込みを大きくします、カー
610   ネルの人達はパッチが正しいかどうかを確認する時間や労力をかけないか
611   らです。5行のパッチはメンテナがたった1秒見るだけで適用できます。
612   しかし、500行のパッチは、正しいことをレビューするのに数時間かかるか
613   もしれません(時間はパッチのサイズなどにより指数関数に比例してかかり
614   ます)
615
616   小さいパッチは何かあったときにデバッグもとても簡単になります。パッ
617   チを1個1個取り除くのは、とても大きなパッチを当てた後に(かつ、何かお
618   かしくなった後で)解剖するのに比べればとても簡単です。
619
6202) 小さいパッチを送るだけでなく、送るまえに、書き直して、シンプルにす
621   る(もしくは、単に順番を変えるだけでも)ことも、とても重要です。
622
623以下はカーネル開発者の Al Viro のたとえ話です:
624
625        "生徒の数学の宿題を採点する先生のことを考えてみてください、先
626        生は生徒が解に到達するまでの試行錯誤を見たいとは思わないでしょ
627        う。先生は簡潔な最高の解を見たいのです。良い生徒はこれを知って
628        おり、そして最終解の前の中間作業を提出することは決してないので
629        す"
630
631        カーネル開発でもこれは同じです。メンテナ達とレビューア達は、
632        問題を解決する解の背後になる思考プロセスを見たいとは思いません。
633        彼らは単純であざやかな解決方法を見たいのです。
634
635あざやかな解を説明するのと、コミュニティと共に仕事をし、未解決の仕事を
636議論することのバランスをキープするのは難しいかもしれません。
637ですから、開発プロセスの早期段階で改善のためのフィードバックをもらうよ
638うにするのも良いですが、変更点を小さい部分に分割して全体ではまだ完成し
639ていない仕事を(部分的に)取り込んでもらえるようにすることも良いことです。
640
641また、でき上がっていないものや、"将来直す" ようなパッチを、本流に含め
642てもらうように送っても、それは受け付けられないことを理解してください。
643
644あなたの変更を正当化する
645-------------------
646
647あなたのパッチを分割するのと同時に、なぜその変更を追加しなければならな
648いかを Linux コミュニティに知らせることはとても重要です。新機能は必要
649性と有用性で正当化されなければなりません。
650
651あなたの変更の説明
652--------------------
653
654あなたのパッチを送付する場合には、メールの中のテキストで何を言うかにつ
655いて、特別に注意を払ってください。この情報はパッチの ChangeLog に使わ
656れ、いつも皆がみられるように保管されます。これは次のような項目を含め、
657パッチを完全に記述するべきです-
658
659  - なぜ変更が必要か
660  - パッチ全体の設計アプローチ
661  - 実装の詳細
662  - テスト結果
663
664これについて全てがどのようにあるべきかについての詳細は、以下のドキュメ
665ントの ChangeLog セクションを見てください-
666  "The Perfect Patch"
667      http://userweb.kernel.org/~akpm/stuff/tpp.txt
668
669これらのどれもが、時にはとても困難です。これらの慣例を完璧に実施するに
670は数年かかるかもしれません。これは継続的な改善のプロセスであり、そのた
671めには多数の忍耐と決意を必要とするものです。でも、諦めないで、これは可
672能なことです。多数の人がすでにできていますし、彼らも皆最初はあなたと同
673じところからスタートしたのですから。
674
675Paolo Ciarrocchi に感謝、彼は彼の書いた "Development Process"
676(http://linux.tar.bz/articles/2.6-development_process)セクショ
677ンをこのテキストの原型にすることを許可してくれました。
678Rundy Dunlap と Gerrit Huizenga はメーリングリストでやるべきこととやっ
679てはいけないことのリストを提供してくれました。
680以下の人々のレビュー、コメント、貢献に感謝。
681Pat Mochel, Hanna Linder, Randy Dunlap, Kay Sievers,
682Vojtech Pavlik, Jan Kara, Josh Boyer, Kees Cook, Andrew Morton, Andi
683Kleen, Vadim Lobanov, Jesper Juhl, Adrian Bunk, Keri Harris, Frans Pop,
684David A. Wheeler, Junio Hamano, Michael Kerrisk, と Alex Shepard
685彼らの支援なしでは、このドキュメントはできなかったでしょう。
686
687Maintainer: Greg Kroah-Hartman <greg@kroah.com>
688